有資格者についての注意点です

 

 有資格者にも違いがあるので説明します。

 

 臨床心理士と公認心理師の両資格保持者にも、どちらか一方の資格保持者にも、指定大学院を修了している者と修了していない者が在ります。

 

 臨床心理士も公認心理師も、資格発足から5年間は「現任者」であれば受験資格がある、という期間を設けていました。

 

 ここで言う現任者とは、「現在、既に相談業務の職に就いて5年以上の経験がある者」を指します。

 

 この猶予条件があった為、指定大学院を修了していない、つまりは難関を突破せず、心理臨床の研究もしていなければ必要な学習も研修もしていない有資格者が存在することになっています。

  

 実はこれもかなり大きな問題であり、確かに資格は持っているが能力が最低基準に達していないという有資格者を多く生むことになりました。

 

 臨床心理士資格が出来た当時、このタイプの有資格者が少なからず問題を起こしていたのです。

 

 公認心理師資格でも同じ現象が生じているでしょう。

 

 理由は簡単で、「現任者」の行っている相談業務が、臨床心理行為とは呼べないものであっても受験可能だったためです。

 

 これでは(特に公認心理師の場合)「資格試験を通る記憶力」の最低保証にしかなっていません。

 

 心理臨床家としての最低保証になっていないのです。

 

 そもそも何故そんな猶予期間を設けたかといえば、そうでもしないと、発足初年度から数年間、受験可能な人が1人も居ない、といった事態が生じるからでしょう。

 

 資格を作るに奔走した本人達すら試験を受けられないといったことになるわけです。

 

 ですが、現任者受験に関しては、受験資格が緩過ぎたと言わざるを得ないでしょう。

 

 よって、心理療法を望む場合、「指定大学院を修了して臨床心理士資格と公認心理師資格の両方を持っている者」を選択することが無難ということになります。

 

 それでも「最も心理臨床家と呼ばれて恥ずかしくない可能性が高いというだけです。

 

 

サイエンティスト・プラクティショナー・モデル

(科学者-実践家モデル)

 

 では、何故そんなに「指定大学院修了」が重要なのでしょうか。

 

 心理臨床の世界は学歴至上主義なのでしょうか。

 

 そうではありません。

 

 心理臨床家には「科学者であれ。かつ実践家であれ」という根本的要請があるからです。(サイエンティスト・プラクティショナー・モデル)

 

 それだけしっかりとした臨床心理学の学びが必須だからです。

 

 単純な事実として、大学卒業レベルの学習では不足だからです。

 

 最低限の学習や研究、研修をこなすには、大学の4年間だけでは時間が圧倒的に足りないのです。

 

 この前提は日本に限った話ではなく、臨床心理士資格取得における世界的スタンダードなのです。

 

 事実、公認心理師資格創設の前には「医療心理師」という資格を作り、これを国家資格化しようという動きがありましたが、その受験要件が大卒だったことで、それでは必要な学習機会を確保出来ないと、心理学界から猛反発を受け不成立となっている歴史があるのです。

 

(勿論、その他にも心理臨床の分野は医療だけに留まらないため等の理由もありましたし、むしろこれが最大の理由でしょう)

 

 大学院という研究機関で研究するということ、それ自体がハイレベルなものであり、研究の基本姿勢、つまりは科学者としての基本姿勢をしっかり学ばねばならぬからです。

 

 この「科学者としての基本姿勢」が無いと、様々な問題の種がばらまかれる危険性が大きく跳ね上がります。

 

 要は自分勝手をする可能性が高まるのです。

 

 当然、これは無資格カウンセラー最大の問題でもあります。

 

 先人たちの研究を蔑ろにし、「自分がそう思うからそうだ」とばかりに自ら研究もせず、その「思ったこと」を平気で行う者は実際に居て、そういった人達が問題を起こしているのです。

  

 当方の臨床家によると、心理臨床家に求められるのは、勉強というよりも修行に近しいものだそうです。修行に慢心や自信過剰は禁物でしょう。自戒を必要とするでしょう。

 

 ここまで来ると指定大学院云々は関係無く、個人の価値観や誠実さといったもの、まさに心理的なものになっているかもしれません。

 

 よって、上の2段落は無視していただいて構いません。しかし、下の1段落には一握の真実が含まれてはいないでしょうか。

 

 「厄介な難関を突破してでも心理臨床家を志そうという覚悟や誠実さの無い者」や「科学的研究も行っていなければ、正規の学習/訓練を経てもいない、つまり、科学的でも実践的でもない資格保持者」がクライアントに会う危険性/可能性を小さくするための関所として指定大学院は一定の役割を有している。

 

 心理療法を求める方は、「所属する臨床家は指定大学院を修了していて臨床心理士と公認心理師の両資格を保持しているか」を基準の1つにしてどこを利用するかを決めてくださると良いかと思います。

  

 ただし、指定大学院修了者かつ臨床心理士と公認心理師の両資格保持者

であっても、どんなプロにも上手な人も(プロとしては)下手な人も居るのと同様、やはり上手下手はあります。

 

 そしてこの上手下手は、心理臨床の場合、まさにそのクライアントさんとその臨床家との相性によって違って来たりもします。

 

 よって「指定大学院を修了していて臨床心理士と公認心理師の両資格を保持しているか」すら、1つの判断材料、しかも最低限の判断材料に過ぎません

  

 何にしろ、ご自分で経験し、ご自分の目で見て、耳で聞いて、頭で考えて、感じて、自分にとって有益か否かということをご判断いただきたいと思います。

 

 

指定大学院を修了していない若手資格保有者へ向けて

 

 資格を取得したばかりの若手心理職が大いに不安を抱えるのは当然の事です。むしろ不安が無い方が心配になります。

 

 もしかしたら、心理臨床の世界に圧倒されているかもしれません。

 

 特に大学院を通過していなければなおのことでしょう。

  

 ですが、クライアントからすれば臨床家の経緯など無関係です。

 

 資格を取り、臨床の場に身を置いた以上、クライアントから見れば、その臨床家が院を出ていようがいまいが関係無く「先生」になります。

 

 つまり、他の臨床家と同じだけの責任が生じます。

 

 全ての臨床家に生涯に渡る修練が求められますが、特に院を出ていない(ハイレベルな研究をこなしていない/適切な学習経験や研修経験に欠ける)ことを健全に意識し、より一層の研鑽に励む必要があります。

 

 科学的に考える基本姿勢を養う必要があります。

 

 「運良く現任者だったから資格を取れた」と喜んでいる場合ではなく、問題はそこからどう動くかです。

 

 所属組織から受験を促されて、仕方なく受験した人も居るでしょう。

 

 それもクライアントには関係無い話です。

 

 心理臨床家として働くならば、相応の覚悟が必要です。

 

 「当然、覚悟など決まっている」という方で、しかし「不安はある」「臨床力の向上は目指したい」という方でしたら、当方にも協力出来る事はあるかもしれません。

 

 当方は、誠実で意欲ある臨床家仲間を歓迎します。 

 

 

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